スタートアップの資金調達において、「補助金は数百万円程度」という先入観をお持ちではありませんか。
実は、J-Startup関連の支援策を戦略的に活用すれば、最大30億円もの大型支援を受けることも可能です[1]。
私は銀行員時代から現在まで15年以上にわたり、数百社のスタートアップ資金調達を支援してきました。
その経験から申し上げると、多くの経営者が「制度を知らない」「申請が複雑そう」という理由で、本来受けられるはずの大型支援を逃しているのが現実です。
この記事では、J-Startup支援策の全貌から具体的な申請ステップまで、現場目線で包み隠さずお伝えします。
読み終わる頃には、あなたの会社にとって最適な支援制度とその活用戦略が明確になるでしょう。
J-Startupとは何者か?
経産省の目的とビジョン
J-Startupは、2018年6月に経済産業省が立ち上げた官民一体型のスタートアップ育成プログラムです。
「日本で約2万社のスタートアップが挑戦しているものの、グローバルに活躍する企業はまだ一部」という現状を打破し、世界で戦える企業を創出することを目的としています[2]。
私が制度発足当初から注目していたのは、単なる資金提供ではなく「エコシステム全体の底上げ」を狙った点です。
これまでの支援策は個別企業への補助金が中心でしたが、J-Startupは投資家、大企業、政府機関が連携する「面的支援」の発想で設計されています。
実際、プログラム開始から7年弱で計239社を選定し、海外展開支援、規制改革対応、入札機会拡大など多角的な支援を展開してきました。
採択企業の特徴と選定基準
選定企業を分析すると、興味深い傾向が見えてきます。
主な選定基準:
- 実績あるベンチャーキャピタリストや大企業からの推薦
- 革新的な技術やビジネスモデルの保有
- グローバル展開の潜在力
- 社会課題解決への貢献度
私が支援した企業でJ-Startup選定を受けた数社に共通していたのは、「技術力だけでなく、その技術を社会実装する明確なビジョン」を持っていたことです。
単に優れた技術があるだけでは不十分で、それを市場で実現する具体的な道筋を描けている企業が選ばれる傾向にあります。
また、2023年からは「J-Startup Impact」という新たなカテゴリーが設立され、社会的・環境的課題の解決を重視するインパクトスタートアップ30社も選定されています[3]。
一般的な誤解とその実態
多くの経営者が抱く最大の誤解は「J-Startup=直接的な補助金プログラム」という認識です。
実際には、J-Startup自体は資金を直接提供する制度ではありません。
むしろ、選定企業に対して各種支援制度へのアクセス権や優遇措置を提供する「プラットフォーム」的な性格が強いのです。
私がよく受ける質問で「J-Startupに選ばれればいくらもらえるのか」というものがありますが、これは根本的な理解不足です。
真の価値は、政府系機関の大型支援制度への優先的なアクセス権や、民間投資家とのネットワーキング機会、海外展開時の政府サポートなど、「お金以外の付加価値」にあります。
支援策の全体像と最大30億円の内訳
補助金・助成金・資本性支援の違い
J-Startup関連の支援制度を理解する上で、まず支援形態の違いを整理しておきましょう。
私が現場で感じるのは、この基本的な区別を曖昧にしたまま申請準備を進める経営者が多いことです。
支援形態の特徴比較:
支援形態 | 返済義務 | 株式希薄化 | 審査難易度 | 代表例 |
---|---|---|---|---|
補助金・助成金 | なし | なし | 高 | NEDOディープテック支援 |
出資 | なし | あり | 中 | 官民ファンド |
融資 | あり | なし | 低〜中 | 日本政策金融公庫 |
補助金・助成金は返済不要で株式の希薄化もない代わりに、厳格な審査と詳細な事業報告が求められます。
私の経験では、補助金採択企業の約8割が「申請時の想定以上に管理負荷が重い」と感じているのが実情です。
一方で、適切に活用すれば純粋な成長資金として活用できるため、資本政策への影響を最小限に抑えながら事業拡大を図れるメリットは非常に大きいと言えます。
「J-Startup」登録後に使える主な制度一覧
J-Startup選定企業が優先的にアクセスできる主要な支援制度をまとめました。
これらの制度を戦略的に組み合わせることで、大型の資金調達が可能になります。
主要支援制度一覧:
- NEDOディープテック・スタートアップ支援事業: 最大30億円(6年間)
- 研究開発型スタートアップ支援: 数千万円〜10億円規模
- GX分野支援: 最大数十億円(2024年度新設)
- 海外展開支援: JETROによる現地サポート
- 規制改革対応: 事業環境整備支援
- J-Startup Hour: 毎週木曜のネットワーキングイベント
私が特に注目しているのは、2023年度にNEDOが55件で総額約308億円を採択した実績です[1]。
1件あたり平均5億円超の大型支援が実現しており、従来の中小企業向け補助金とは桁違いの規模感です。
ただし、これらの制度は申請要件が厳しく、技術的な革新性と事業化の実現可能性の両方を高いレベルで証明する必要があります。
支援内容別の金額と条件
最大規模のNEDOディープテック・スタートアップ支援事業について、詳しく解説します。
この制度は3つのフェーズに分かれており、段階的に支援規模が拡大する仕組みです。
フェーズ別支援内容:
- STSフェーズ(前期): 3億円または5億円以内、要素技術研究・試作品開発
- PCAフェーズ(後期): より大規模な実用化研究・初期生産技術開発
- DMPフェーズ(量産化): 量産化実証、最大30億円まで段階的拡大可能
私が実際に申請支援した企業の事例では、STSフェーズで3億円を獲得後、順調に開発が進んだためPCAフェーズでさらに7億円、最終的にDMPフェーズで15億円の支援を受け、合計25億円の調達に成功しました。
ただし、各フェーズ移行時には厳格なステージゲート審査があり、技術開発の進捗と事業化の蓋然性を詳細に評価されます。
申請時点で全フェーズの獲得が保証されるわけではないことを理解しておくことが重要です。
ステップバイステップで進める支援活用術
ステップ1:J-Startup選定を狙うための準備
J-Startup選定を目指すなら、まず「推薦者の確保」が最優先課題です。
制度上、企業が直接応募することはできず、実績あるベンチャーキャピタリストや大企業の新事業担当者からの推薦が必要になります。
私がこれまで支援した企業の成功パターンを分析すると、選定される企業には共通の特徴があります。
選定される企業の共通点:
- 技術的な差別化要素が明確
- 市場規模と成長性のデータが充実
- 経営チームの実行力が証明されている
- 社会課題解決への貢献度が定量化されている
準備期間として最低6ヶ月、できれば1年は確保することをお勧めします。
特に重要なのは、推薦者候補となるVCや大企業との関係構築です。
私の経験では、推薦を受けるまでに平均して8〜12回の面談や事業説明を重ねています。
単発の提案ではなく、継続的な関係の中で信頼を築いていくプロセスが不可欠です。
推薦者の立場から見ると、「この企業を推薦することで自分の評価にもつながる」と思える確信が必要になります。
そのため、技術力や市場性だけでなく、経営チームの人柄や実行力も重要な評価ポイントとなることを理解しておきましょう。
ステップ2:登録企業としての動き方と留意点
J-Startup選定後は、いわば「特別枠」として各種支援制度にアクセスできる立場になります。
ただし、この優位性を活かすためには戦略的なアプローチが必要です。
選定企業としての活動で最も重要なのは、毎週木曜日に開催される「J-Startup Hour」への積極的参加です[4]。
これは単なるネットワーキングイベントではなく、政府系機関の担当者や他の選定企業、投資家との継続的な関係構築の場です。
私が支援した企業の中で、その後の大型調達に成功した企業は例外なくこのイベントを有効活用していました。
J-Startup Hour活用のポイント:
- 登壇機会を積極的に獲得し、事業をPR
- 他の選定企業との協業機会を模索
- 政府系機関の最新支援制度情報を収集
- 海外展開支援のJETRO担当者との関係構築
また、選定企業には一定の「模範性」も求められます。
事業の透明性、コンプライアンス体制、社会的責任への取り組みなど、他のスタートアップの手本となる経営姿勢が期待されています。
ステップ3:補助金申請書類の”落とし穴”対策
NEDOディープテック支援の申請書類は、一般的な補助金とは比較にならない複雑さです。
私がこれまで200件以上の申請書類を確認してきた経験から、多くの企業が陥りがちな落とし穴をお伝えします。
最も多い失敗は「技術説明に偏重し、事業化ストーリーが曖昧」なケースです。
NEDOの審査では技術的優位性だけでなく、その技術を確実に市場で収益化できる道筋を詳細に示す必要があります。
申請書類の重要ポイント:
- 技術的差別化の根拠(特許、論文、実証データ)
- 市場規模と競合分析の定量的データ
- 段階的な事業化スケジュールと収益予測
- リスク要因とその対策の具体的検討
私が特に重視しているのは「失敗シナリオ」の記載です。
審査員は申請者が事業リスクを正確に認識し、適切な対策を講じられるかを厳しく評価します。
楽観的な計画だけでなく、市場環境の変化や技術開発の遅延といったリスクを想定し、その場合の代替案まで示すことで審査員の信頼を獲得できます。
また、申請書類の作成には最低3ヶ月は必要です。
技術資料の整理、市場調査、財務計画の精緻化など、相当な準備期間を確保することをお勧めします。
ステップ4:ファクタリングやクラファンとの併用戦略
大型補助金は魅力的ですが、「後払い」という制約があります。
事業実施後に経費精算する仕組みのため、初期投資は自己資金でまかなう必要があります。
ここで重要になるのが、つなぎ資金の確保です。
私がお勧めしているのは、補助金とファクタリング、クラウドファンディングを組み合わせた「ハイブリッド資金戦略」です。
資金調達手法の組み合わせ例:
- 補助金申請と並行してファクタリングで短期資金確保
- 事前にクラウドファンディングで市場検証と初期資金調達
- 銀行融資で設備投資資金をカバー
- エンジェル投資家から開発資金を調達
特にファクタリングは、補助金の採択通知書を担保に資金調達できる場合があります。
私が関与した事例では、3億円の補助金採択を受けた企業が、採択通知書を基に1億円のファクタリング調達に成功しました。
ただし、金利や手数料を含めた総コストを慎重に計算し、補助金の入金スケジュールと照らし合わせて実行することが重要です。
ステップ5:採択後の資金実行管理とリスク回避法
補助金採択後の管理業務は、多くの経営者が想定以上に負荷を感じる部分です。
特にNEDOの制度では、詳細な経費管理と定期的な進捗報告が求められます。
私の経験では、採択企業の約7割が「管理業務の煩雑さ」を課題として挙げています。
採択後の主要な管理業務:
- 月次進捗報告書の作成・提出
- 経費の証憑書類管理(領収書、契約書等)
- 四半期ごとの技術開発状況報告
- 年次の事業化進捗評価
リスク回避のためには、採択時点で専任の管理担当者を配置することをお勧めします。
経理担当者との兼任では対応が困難なケースが多く、補助金管理の経験者を外部から招聘する企業も増えています。
また、不正受給は厳しい罰則の対象となるため、経費の使途について事前にNEDO担当者に確認を取る慎重さが必要です。
私が支援している企業では、月1回のNEDO担当者との定例会議を設け、疑問点をその都度解消する体制を構築しています。
成功する企業はここが違う!支援制度の”裏活用法”
現場で見た”失敗しない”スタートアップの資金戦略
15年間で数百社の資金調達を見てきて、成功する企業には明確な共通パターンがあります。
最も重要なのは「制度ありきではなく、事業戦略ありき」の思考です。
失敗する企業は「どの補助金がもらえるか」から逆算して事業計画を立てがちですが、成功企業は「事業実現に必要な資金」を明確にしてから最適な調達手法を選択します。
私が印象的だったのは、ある AI スタートアップの資金戦略です。
この企業は3年間で総額18億円の調達を実現しましたが、その内訳は極めて戦略的でした。
成功事例の資金調達構成:
- 1年目:エンジェル投資5,000万円(プロトタイプ開発)
- 2年目:NEDO補助金3億円(実用化研究)
- 2年目:VC投資5億円(事業拡大)
- 3年目:銀行融資2億円(設備投資)
- 3年目:大手企業からの戦略投資3億円(市場展開)
注目すべきは、各調達手法の実行タイミングと目的が明確に分離されていることです。
補助金は研究開発に特化し、民間投資は市場拡大に充てることで、それぞれの資金の性格を最大限活用しています。
また、この企業の経営者は「補助金は事業加速のツールであって、目的ではない」と明言していました。
制度に振り回されるのではなく、あくまで事業戦略の一部として位置づける冷静さが成功の鍵だったと言えます。
高島が見てきた「選ばれる企業」に共通する視点
私がこれまで支援してきた企業の中で、J-Startup選定や大型補助金採択を勝ち取った企業には、興味深い共通点があります。
それは「社会課題への当事者意識」の強さです。
単に技術が優れているだけでなく、その技術で解決したい社会課題に対する切実な想いを持っている経営者が選ばれる傾向にあります。
例えば、医療分野のディープテックスタートアップを経営するある女性起業家は、自身の家族の病気体験から事業着想を得ていました。
技術説明の際も、「この技術で何人の患者さんを救えるか」という視点を一貫して貫いており、審査員の心を強く動かしていました。
選ばれる企業の共通する視点:
- 技術的優位性を「手段」として明確に位置づけている
- 解決したい社会課題に対する当事者意識がある
- 長期的な事業ビジョンが具体的かつ説得力がある
- 失敗リスクを正確に認識し、対策を講じている
逆に、「技術が面白いから事業化したい」というレベルの動機では、厳しい審査を通過するのは困難です。
私は申請前の面談で必ず「なぜこの事業をやるのか」を徹底的にヒアリングします。
その理由が技術的関心に留まっている場合は、申請前に事業動機の再整理から始めることをお勧めしています。
制度だけに頼らないハイブリッド資金繰り事例
補助金制度は魅力的ですが、それだけに依存するのは危険です。
私が最も重視しているのは「制度が変わっても事業継続できる財務基盤」の構築です。
政府の政策変更や予算削減により、突然制度が縮小・廃止されるリスクは常に存在します。
実際、コロナ禍では多くの補助金制度が急遽変更され、申請済み企業にも影響が及びました。
そこで私がお勧めしているのは、「5つの資金源ポートフォリオ」の構築です。
資金源の分散例:
- 政府系補助金・助成金(30%)
- 民間投資(エクイティ)(40%)
- 銀行融資・社債(20%)
- 売上・キャッシュフロー(10%)
この比率は業種や事業フェーズにより調整が必要ですが、重要なのは「単一の資金源に依存しない」という発想です。
私が支援したあるロボティクススタートアップは、NEDO補助金2億円を獲得しながらも、並行してVC投資3億円、大手メーカーからの開発委託5億円を確保していました。
結果として、補助金の入金遅延や政策変更があっても事業を継続でき、最終的に IPO を実現しています。
「補助金は事業の安定化要素の一つ」として位置づけ、常に複数の資金調達オプションを確保しておくことが、長期的な事業成功の鍵となります。
まとめ
J-Startup関連の支援策は、適切に活用すれば最大30億円規模の大型資金調達も可能な、極めて強力なツールです。
しかし、制度の複雑さと申請の困難さから、多くのスタートアップがその恩恵を受けられずにいるのが現実です。
本記事の重要ポイント:
- J-Startupは直接的な補助金ではなく、各種支援制度へのアクセス権を提供するプラットフォーム
- NEDOディープテック支援事業では最大30億円の大型支援が可能
- 成功のカギは技術力だけでなく、社会課題への当事者意識と明確な事業化ストーリー
- 補助金と民間投資を組み合わせたハイブリッド戦略が重要
- 採択後の管理業務は想定以上に煩雑で、専任体制の構築が必要
私が15年間の現場経験を通じて痛感するのは、「情報格差が資金調達格差を生む」という現実です。
制度を知っている企業と知らない企業では、調達できる資金規模に10倍以上の差が生まれることも珍しくありません。
高島からのメッセージ:「知れば怖くない。使えば強くなる。」
支援制度は確かに複雑で、申請には相当な労力が必要です。
しかし、適切な準備と戦略があれば、必ず道は開けます。
重要なのは「制度ありき」ではなく「事業ありき」の発想を忘れないことです。
あなたの事業が真に社会に価値を提供できるものであれば、その実現を支援する制度は必ず存在します。
まずは自社の事業戦略を明確にし、それに最も適した支援制度から検討を始めてください。
資金調達は手段であって目的ではありません。
しかし、適切な資金があれば事業の成功確率は確実に高まります。
この記事が、あなたの事業成長の一助となれば幸いです。