どうも、企業財務コンサルタントの高島俊明です。
シード期や創業期の経営者の方から、「事業実績がなくて、ファクタリングの審査に通らない」という悲痛な相談をよく受けます。
銀行員時代、多くのスタートアップを見てきましたが、資金繰りはいつの時代も経営者の悩みの種ですね。
しかし、諦めるのはまだ早い。
実は、ファクタリング会社の審査担当者は、皆さんが思っているのとは少し違うポイントを見ています。
今回は、元銀行員の私が、単なるテクニックではない、審査の「本当の急所」を突くための5つの裏技を、現場の裏話も交えながらお教えします。
この記事を読めば、資金調達は”怖いもの”ではなく、事業を成長させるための”戦略”になるはずです。
目次
なぜシード期はファクタリング審査に通りにくいのか?金融のプロが語る3つの壁
まず読者の「なぜうちは通らないんだ」という疑問に共感し、その理由を専門家の視点で明確に解説します。
銀行員時代、私は数多くの創業期企業を担当してきました。
その経験から言えるのは、シード期の企業がファクタリング審査で苦戦するのには、明確な理由があるということです。
壁①:会社の「信用履歴」がほぼ存在しない
創業間もない企業が直面する最大の問題は、決算書や取引履歴といった「過去の実績」で評価できないという根本的な課題です。
銀行員として融資審査を行っていた際、私たちが最も重視していたのは「継続性」でした。
3期分の決算書があれば、その会社の経営の安定性や成長性を数字で判断できます。
しかし、シード期の企業にはそれがない。
ファクタリング会社の審査担当者も同様の不安を抱きます。
「この会社は本当に事業を継続していけるのか?」「ペーパーカンパニーではないのか?」といった疑念が生まれるのです。
私が銀行員時代に担当したあるIT系スタートアップは、優秀な技術を持ちながらも、設立6ヶ月という理由だけで融資審査が長期化した経験があります。
壁②:売掛金の「信憑性」を証明しにくい
継続的な取引実績がないため、単発の請求書だけでは「本当にこの取引は存在するのか?」と疑われやすいのが二つ目の壁です。
ファクタリングの審査で最も警戒されるのが「架空請求書」による詐欺です。
実際に、請求書を偽造して資金を騙し取ろうとする悪質な事例が後を絶たないため、審査担当者は非常に慎重になります。
私が銀行で法人営業をしていた頃、ある製造業の経営者から相談を受けました。
「新規の大口取引先から受注をもらったが、その請求書でファクタリングを申し込んだら断られた」という内容でした。
調べてみると、取引先との契約書は締結されているものの、過去の入金実績がないため、ファクタリング会社が慎重になっていたのです。
シード期企業が信憑性で疑われやすいケース:
- 初回取引の請求書のみの提出
- 契約書はあるが入金実績が皆無
- 取引先との関係性を示す資料の不足
- メールや発注書などの証跡書類の未整備
壁③:売掛先(取引先)も信用力が低いケース
シード期は取引先も同様にスタートアップであることが多く、売掛先の信用力も評価されにくいという「負の連鎖」が発生します。
ファクタリングの審査では、利用者(あなたの会社)よりも売掛先(取引先)の信用力の方が重視されます。
なぜなら、最終的に売掛金を支払うのは売掛先だからです。
しかし、スタートアップ同士の取引では、どちらの企業も設立間もなく、従来の信用評価の枠組みでは「リスクが高い」と判断されがちです。
私が銀行員時代に経験した事例では、AI開発のスタートアップA社が、同じくスタートアップのB社から受注を受けました。
A社の技術力は素晴らしく、B社の事業計画も将来性がありましたが、両社とも設立1年未満だったため、従来の審査基準では評価が困難でした。
この壁をどう乗り越えるかが、シード期企業の資金調達における鍵となります。
【元銀行員が伝授】ファクタリング審査を通す5つの戦略的裏技
ここからが本題です。
「裏技」を単なる小手先のテクニックではなく、金融のプロが認める「戦略的な立ち回り」として解説します。
私の銀行員経験と、独立後の企業財務コンサルタントとしての実践から導き出した、審査突破のための具体的手法をお教えします。
裏技①:売掛先の「信用力」をこちらから提示する
「審査は相手がするもの」という受け身の姿勢を覆し、積極的に売掛先の信頼性を証明する戦略です。
多くの経営者は、ファクタリング会社が「勝手に調べてくれる」と思っています。
しかし、審査担当者の立場で考えてみてください。
限られた時間の中で、見ず知らずの会社を一から調査するのは大変な作業です。
そこで、こちらから積極的に情報提供するのです。
具体的な提示資料:
- 売掛先の公式ホームページの印刷
- プレスリリースや新聞記事のコピー
- 売掛先の登記簿謄本(取得可能な場合)
- 業界内での評判や地位を示す資料
- 売掛先の財務情報(公開企業の場合)
私がコンサルタントとして支援したある食品製造業のクライアントは、取引先である大手コンビニチェーンとの契約を強調するため、そのコンビニの店舗展開状況や業界内でのシェアをまとめた資料を作成しました。
その結果、初回申込みながら好条件でのファクタリングが実現しました。
裏技②:「事業の将来性」をA4一枚でプレゼンする
ファクタリング会社も「一回きりの取引」より「継続的な優良顧客」を求めているというインサイトを活用した戦略です。
ファクタリング会社の本音を教えましょう。
彼らも事業者です。
一度きりの取引よりも、継続して利用してくれる優良顧客の方が価値があります。
そこで、あなたの会社の将来性を簡潔にアピールするのです。
A4一枚プレゼン資料の構成例:
項目 | 記載内容 |
---|---|
事業概要 | 何をしている会社か(3行以内) |
市場の可能性 | 対象市場の規模と成長性 |
競合優位性 | 他社との差別化ポイント |
資金使途 | 今回の資金で何を実現するか |
将来の売上計画 | 6ヶ月~1年後の売上見込み |
ファクタリング継続予定 | 今後の利用頻度や金額規模 |
私の銀行員時代の経験では、優秀な経営者ほど「将来のビジョン」を明確に語れました。
数字だけでなく、情熱も伝わる資料を作ることで、審査担当者の印象は大きく変わります。
裏技③:あえて「3社間ファクタリング」を交渉のテーブルに乗せる
手数料の安さだけでなく、「取引先に通知できる=やましい取引ではない」という強力な証明になるのが3社間ファクタリングです。
一般的に、シード期の企業は「取引先にバレたくない」という理由で2社間ファクタリングを選びがちです。
しかし、ここで逆転の発想をします。
「3社間でも構いません」という姿勢を見せることで、取引の透明性をアピールするのです。
3社間ファクタリング提案のメリット:
- 手数料が大幅に削減(2社間8-20% → 3社間1-9%)
- 取引の実在性を強力に証明
- ファクタリング会社のリスクが低減
- 売掛先との関係が良好であることの証明
実際には2社間で契約する場合でも、この提案をすることで審査担当者に「この会社は隠すことがない」という印象を与えられます。
私がコンサルタントとして支援したWebマーケティング会社では、主要取引先との関係性が良好だったため、3社間を提案したところ、手数料が当初の15%から6%まで下がりました。
裏技④:請求書+αの「エビデンス」で固める
請求書だけでなく、取引の存在を証明するあらゆる資料を揃えることで、審査担当者の信頼を勝ち取る戦略です。
銀行融資の審査でも同様ですが、「証拠の多さ」は信頼性に直結します。
架空取引を疑われがちなシード期だからこそ、この戦略は特に有効です。
提出すべきエビデンス一覧:
1.基本書類
- 請求書(原本)
- 取引基本契約書
- 個別の発注書・注文書
2.取引経緯を示す書類
- 商談時のメール履歴
- 見積書とその承認メール
- 打ち合わせ議事録
3.納品・検収関連
- 納品書・検収書
- 成果物の写真や画面キャプチャ
- 顧客からの満足度に関するメール
4.過去実績(あれば)
- 同じ取引先からの過去の入金履歴
- 通帳のコピー(入金記録)
私が銀行員時代に「この会社は信頼できる」と感じたのは、常にこうした詳細な資料を整備している企業でした。
「ここまでやるか」と思わせることが、担当者の心証を大きく左右します。
裏技⑤:「正直に話せる」担当者を味方につける
複数のファクタリング会社に正直に状況を話し、親身に相談に乗ってくれる担当者を見つける、人情派ならではの戦略です。
これは私の持論ですが、最終的にビジネスは「人と人」です。
特に、前例の少ないシード期の案件では、担当者の判断力と社内での調整力が成否を分けます。
良い担当者の見分け方:
- 初回相談で親身にヒアリングしてくれる
- 業界の知識や経験が豊富
- 「どうすれば審査に通るか」を一緒に考えてくれる
- 社内での影響力や調整力がある
- レスポンスが早く、約束を守る
実際の体験談をお話しします。
私がコンサルタントとして支援したあるIT企業では、最初の2社から断られた後、3社目で素晴らしい担当者に出会いました。
その方は、「シード期でも諦める必要はない」と励ましてくれ、審査に必要な追加資料を具体的にアドバイスしてくれました。
最終的に、その担当者が社内で粘り強く調整してくれたおかげで、審査通過を実現できました。
良い担当者は、あなたの会社の「営業マン」になってくれます。
そのためには、こちらも誠実で正直な姿勢を示すことが重要です。
要注意!こんな「裏技」は会社の寿命を縮めるだけ
読者が誤った道に進まないよう、プロとして強く警告するセクションです。
資金繰りに追い詰められると、つい「なんでもいいから資金を調達したい」という気持ちになりがちです。
しかし、以下のような方法は絶対に避けてください。
短期的には資金を得られても、長期的に会社を破綻に追い込む危険性があります。
NG例①:請求書の金額を偽る・架空の請求書を作る
これは犯罪行為(詐欺罪)にあたります[1]。
絶対にやってはいけません。
私が銀行員時代に目撃した事例では、架空売上を計上して融資を受けようとした企業が、後に刑事告発されました。
経営者個人の信用は地に落ち、会社も倒産に追い込まれました。
一時的な資金難を解決するために、将来を台無しにしてはいけません。
架空取引が発覚した場合のリスク:
- 詐欺罪での刑事告発
- 損害賠償請求
- 業界での信用失墜
- 金融機関からの永久排除
NG例②:同じ債権を複数の業者に売却する(二重譲渡)
二重譲渡は民法上の問題となり、発覚すれば深刻なトラブルに発展します。
ファクタリング業界では、二重譲渡を防ぐための情報共有が進んでいます。
発覚すれば業界全体からブラックリストに載せられ、今後一切のファクタリング利用ができなくなる可能性があります。
NG例③:高すぎる手数料の悪質業者に手を出す
年率換算で数百%~数千%という法外な手数料を要求する業者は、ヤミ金と変わりません[3]。
悪質業者の見分け方:
- 手数料が異常に高い(2社間で30%超、3社間で15%超)
- 契約書の内容が不明確
- 償還請求権がある(実質的な融資)
- 会社の所在地が不明確
- 金融庁や貸金業協会に登録されていない
一時的に資金を得ても、高額な手数料で経営が圧迫され、結果的に倒産に追い込まれた企業を数多く見てきました。
正当なファクタリング会社を選ぶことが、会社の未来を守ることにつながります。
よくある質問(FAQ)
Q: 赤字決算なのですが、審査に影響しますか?
ファクタリングは融資と違い、自社の業績よりも「売掛先の支払い能力」が重視されるため、赤字決算でも利用できる可能性は十分にあります[1]。
むしろ、赤字だからこそ活用すべき資金調達手段です。
ただし、その赤字の理由を補足資料で説明できると、より心証が良くなります。
私がコンサルタントとして支援した企業の中にも、2期連続赤字ながらファクタリングを成功させた事例があります。
Q: 個人事業主やフリーランスでも利用できますか?
はい、可能です。
法人格の有無よりも、売掛債権の質が重要視されます。
ただし、個人事業主に対応しているファクタリング会社を選ぶ必要がありますので、事前に確認しましょう。
Q: 必要な書類は何を準備すれば良いですか?
最低限、以下の書類は揃えておきましょう:
必須書類:
- 請求書(原本)
- 取引先との基本契約書や発注書
- 入金が確認できる通帳のコピー
- 本人確認書類(法人の場合は登記簿謄本)
推奨書類:
- 納品書・検収書
- 取引経緯のメール履歴
- 売掛先の会社情報
- 事業計画書(簡易版)
本記事で紹介した「+αの資料」も準備すると万全です。
Q: 審査にはどれくらいの時間がかかりますか?
オンライン完結型のサービスでは最短即日で入金されるケースもありますが、一般的には2〜5営業日ほど見ておくと良いでしょう。
シード期の場合、追加のヒアリングなどが発生する可能性も考慮し、余裕を持って申し込むことをお勧めします。
Q: 手数料の相場はどれくらいですか?
現在の相場は以下の通りです[2]:
契約形態 | 手数料相場 | 特徴 |
---|---|---|
2社間ファクタリング | 8%〜20% | 売掛先への通知不要 |
3社間ファクタリング | 1%〜9% | 売掛先の同意が必要 |
これより著しく高い手数料を提示された場合は、他の業者とも比較検討することをお勧めします。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
シード期のファクタリング審査は、決して楽な道ではありません。
しかし、今日お話ししたように、審査担当者の視点を理解し、少しの工夫と誠実な姿勢で準備すれば、道は必ず開けます。
今回お伝えした5つの裏技のポイント:
- 売掛先の信用力を積極的に提示 – 受け身ではなく攻めの姿勢で
- 事業の将来性をA4一枚でアピール – 継続顧客としての価値を示す
- 3社間ファクタリングも検討 – 透明性と低コストを両立
- 豊富なエビデンスで信頼獲得 – 「ここまでやるか」という印象を与える
- 良い担当者との人間関係構築 – 最後は人と人のつながりが重要
資金調達は、会社の未来を創るための重要な戦略です。
目先の資金繰りに追われるだけでなく、知識を武器に、賢く、そして力強く、この厳しい創業期を乗り越えていってください。
私も、そんな挑戦する経営者の皆さんを全力で応援しています。
もし一人で悩んでいるなら、いつでも専門家に相談してください。
あなたの会社の価値を、正しく評価してくれる場所は必ずありますから。